Witch Questの表紙に戻れるでよ

デルデロとあった日

作者:蒼穹

 

「おかーさん。私ね!」 

お母さんと私は夕暮れの中、ススキの野原をあるいていました。

お母さんは、ちょっと笑いながら
「知ってるわよ。もうすぐあなたの誕生日なんでしょ。チャネルの今年の誕生日プレゼントはなにがいいかしらねぇ?」

私は、本当はそのとき、魔女になりたいっていおうと思ったんです。
お母さんは、魔女の血筋をひいていたから、私は生まれたときにふわって浮いたんだって、おばあちゃんがいっていました。

でも、お母さんは魔女にはなりませんでした。
だから、お母さんはなるべく私から魔女だってことを忘れさせようとしてるんだって、思いました。
なぜって、自分の娘が13歳になったら家を出て魔女として自立しなくちゃいけないなんて、そんなことが許せないようです。

いえいえ。いい〜んですよ〜、そんな心配しなくたって。魔女の方が気楽だもんね、ほうきで飛べるし、魔法は使いたい放題らしいし。

魔女になる。私は、その日の日記にそう書いた。
それから、魔女になるための条件を書いてみた。

  • 毎日真っ黒な服を着る。
  • 木と小枝だけでできたほうきを見つける。
  • 学校にはいかない。
  • お母さんからお小遣いをもらわない。

いや、どうも何かが変な気がする。う〜ん。

私の誕生日の、10月10日はあしたでした。
町はもう秋まっさかり。紅葉の季節でした。

次の日、目が覚めて私は13歳になりました。ふふふ。私はもう魔女よ〜〜。
試しに「カーテンの色は紫色になれ〜」と、いってみました。ところが、何もおきません。

ゆるせん。ゆるせんぞぉぉぉ。私は魔女なのにっ。
さんざん呪いの言葉を吐いて、最後には「世界人類が死滅しますように」などと言ってみましたがだめでした。……今思うとだめでよかったです。

もしかしたらっ。黒い服とほうきが必要なのかも!
さっそく魔女のコスプレをして、リトライ。やっぱり最後には「ビッグバンが起これ〜」などといってみましたがだめでした。
ほへ〜んは〜ん。(ためいき)

その日一日は、友達に「チャネル誕生日おめでとう!」とか、「これ、君のために作ったんだ(by アレフ)」など、虚ろな目の色をした小さい秋状態の私の目の前で友達がいろいろ祝ってくれました。
そして、夕方は私の誕生日パーティーでした。いつもと同じで、いつもよりもちょっと豪勢な食卓。
私は、お母さんから本格革の財布をもらいました。中には1金貨入っていて、らっき〜♪

ところがそんな中で、紙袋に包んだ四角いものを、おじいちゃんが私に差し出しました。

あら、おじいちゃん。今年は本ですか?ってお母さんが笑ったけど、私はおじいちゃんがしっかり私に向かってウインクをしたのを見逃しませんでした。

そうやっておばあちゃんをゲットしたのか…!!

おばあちゃんは死んじゃったけど、きっといてくれたら私に魔法を教えてくれたんだろうなぁ。おばあちゃんは、私が知っている限りでただ一人の魔女だったからです。

私が自分の部屋で、その紙袋あけると、「How to be a Witch」という題名の本がでてきました。
しかし! 私はそのとき英語が読めなかったのです。とても大切なことです、これは。

“けっ。ジュニアハイスクールにいってんだったら英語ぐらい読め、ば〜か”

本がしゃべりました。しかもいきなり、しゃべった言葉が「ば〜か」……。くらくら。

そして、本はそれっきりしゃべらなくなって、題名が「魔女になるには」に変わっていました。
その本の中に、

「魔女になるには、魔女猫が必要である」という文字が浮かび上がりました。

べんりだっ。コンビニなみに便利だ。
「13歳の誕生日に生まれた猫を見つけてきて、その猫を魔女猫にすることで魔女になる儀式とする」

うわっ。たいへんだっ。
時計をみると、もう九時でした。今日生まれた猫なんて見つかるか!と思いましたが、私は密かに夜の町にでました。
駐車場の影や、路地裏に猫はたくさん見かけました。でも生まれたばかりの猫なんていません。
というか、普通野良猫は自分の赤ちゃんを人前で産んだりしないのではないでしょうか。

そのとき私はカレンの家で、もうすぐ産まれそうな母猫がいるってことを思い出しました。
私は、近所のカレンの家に夜遅く無理やりお邪魔して、カレンちゃんに「産まれたばかりの猫いない?ど〜しても私の人生に必要なの」と、カレンちゃんにお願いしました。
カレンちゃんは「ちょうど今日産まれたの。いいよ」っていってくれました。いやっほぅ!私ってついてる。

カレンちゃんは、一匹の、まだほとんど目の開いていないかわいい子猫をつれてきました。
「この仔なら、いいよ」まだちっちゃくって、耳がとってもかわいらしい赤ちゃん猫でした。 

♪!!!!(かわいい)

「ありがとう!」私はカレンちゃんの腕から、その仔の名前を何にしようかと幸せなことを考えながら抱きしめようとしたそのときでした。

「ズギュ〜ン」「ドサッ」何かが飛んできて、私の目の前でその猫は倒れたまま動かなくなりました。
にやり。飛んできた、不敵な笑いを浮かべていたのは、やっぱり同じくらい小さい猫でした。
「気絶してるよ〜」と泣き崩れるカレンちゃんに、私は呆然とその猫を見つめました。

「あの猫も今日生まれたの。今日生まれた猫はもうあいつしか残ってないわ」
私は私のそばに擦り寄ってきたその猫を、無意識に抱き上げました。
「この猫しかいないの……?」泣きじゃくりながらうなずくカレンちゃんは、私にその猫をもらってくれないかと頼みました。
私は、ほとんど泣きそうになりながらその仔猫を引き取りました。
家を出た瞬間、家の中で仔猫たちがうれし泣きの声が聞こえてきた気がしました。

もう時間もないし、私は仕方なくこの粗暴猫を私の魔女猫にすることにしました。
その瞬間、猫の言葉がわかるようになったのです。
「やぁ。君の名前は?僕の名前はデルデロ。超一流のスナイパーになる男さ。僕と組めば大金が手に入って余裕しゃくしゃくの人生が送れるよ。よろしく」すらすらと流暢に、そして私に名前をつけられることなく自分で「デルデロ」と名乗った猫が、私のパートナーになって、私の魔女の生活が始まったのでした。

おわり。